日本山の科学会2019年 秋季研究大会

日本山の科学会2019年秋季研究大会(川崎)のお知らせ(第3報)

2019 年 秋季研究大会 一般研究発表・公開ミニシンポジウム・要旨集 はこちら(PDF 5MB)

期日 2019年10月26日(土)・27日(日)

会場 専修大学サテライトキャンパス(小田急線向ヶ丘遊園駅北口徒歩1分;神奈川県川崎市)

https://www.senshu-u.ac.jp/social/satellite/

日程 10 月26 日(土)

10:25~12:00 研究発表(※受付開始時刻 10時)

12:00~12:30 総会

13:30~15:00 研究発表

15:10~17:35 公開ミニシンポジウム「山の科学―人と自然」

(※受付開始時刻 14時45分)

<サブテーマ1> 日本の山における自然環境とその利用

15:10~15:15 開会挨拶

15:15~15:40 飯田義彦(金沢大)「山林資源の利用史からみる山村文化の創造-用材と木地を生んだ里山の針広混交林-」

15:40~16:05 松尾容孝(専修大)「コモンズとしての現代林野の模索-利用と保全を併進する林野共同体-」

<サブテーマ2> 欧州の山における自然環境とその利用

16:10~16:35 横山秀司(九州産業大名誉教授)「東アルプスの山岳景観-景観生態学の視点から-」

16:35~17:00 山本 充(専修大)「オーストリアの山岳チロルにおける景観の変容」

17:00~17:35 総合討論

17:35~17:40 閉会挨拶

一般研究発表プログラム

・会場:専修大学サテライトキャンパス

・ポスター発表のコアタイム:

ポスターナンバー 奇数 10 時30 分~12 時00 分

ポスターナンバー 偶数 13 時30 分~15 時00 分

※一般研究発表は全てポスター発表形式で行われます。

1 佐々木明彦(国士舘大),西村基志(信州大),鈴木啓助(信州大):北アルプス乗鞍火山の高山帯における気温・地温状況

2 小山紗莉(信州大),西村基志(信州大),黒雲勇希(信州大),鈴木啓助(信州大):上高地における冷気湖形成とその気象条件

3 西村基志(信州大),佐々木明彦(国士舘大),鈴木啓助(信州大):雪面熱収支に影響を及ぼす冬期降雨の地域特性

4 上原元樹(信州大),佐々木明彦(国士舘大),鈴木啓助(信州大):乗鞍・上高地における降水の局地性

5 渡邉茜(千葉大),服部祥平(東京工業大),吉田尚弘(東京工業大),竹内望(千葉大):山形県月山の樹林帯の融雪期の積雪表面に含まれる硝酸の起源

6桂川 司(信州大),山中 勤(筑波大),佐々木明彦(国士舘大),黒雲勇希(信州大),西村基志(信州大),清水啓紀(信州大),鈴木啓助(信州大):中部山岳地域における降水安定同位体比の時空間変動

7 長幡嘉健(信州大),榊原厚一(信州大),鈴木啓助(信州大):上高地湧水における環境トレーサーの時間変化特性の解明

8 黒雲勇希(信州大),佐々木明彦(国士舘大),鈴木啓助(信州大):上高地の冷気湖形成に及ぼす新雪の影響

9 井手玲子(国立環境研),小熊宏之(国立環境研),岡本遼太郎(筑波大):定点カメラを用いた立山における消雪の時空間変動の検出と地形因子との関係解析

10有江賢志朗(新潟大),奈良間千之(新潟大),福井幸太郎(立山カルデラ砂防博),飯田肇(立山カルデラ砂防博):飛騨山脈北部における氷河と多年性雪渓の質量収支

11 栗林正俊(長野県環境保全研), 浜田崇(長野県環境保全研):中部山岳域における積雪期間の観測とモデリングの課題

12 奈良間千之(新潟大),有江賢志朗(新潟大),水野一晴(京都大):ケニア山とキリマンジャロの氷河の質量収支

13 永井 信(JAMSTEC): 流域における桜の開花季節

14田村梓(信州大),小熊宏之(国立環境研),藤本稜真(信州大),栗林正俊(長野県環境保全研),牧田直樹(信州大):飯綱山カラマツ林における葉と細根のフェノロジー

15 岡本聖矢(信州大), 東城幸治(信州大):標高傾度に沿ったモンカゲロウ Ephemera 属昆虫の分布と外部要因との関係について

16 島津 弘(立正大):ニューカレドニアにおける山地河川の土砂移動と山の環境

17栗本享宥(専修大),苅谷愛彦(専修大),目代邦康(東北学院大),山田隆二(防災研),木村誇(防災研),佐野雅規(早稲田大),對馬あかね(気象研),李貞(名古屋大),中塚 武(名古屋大):岐阜県郡上市水沢上の大規模地すべりと1586 年天正地震との関係

18 杉山博崇(新潟大),奈良間 千之(新潟大),井上 公(防災科研) :白馬大雪渓周辺における近年の岩盤斜面の地形変化

19 木村恵樹(専修大),苅谷愛彦(専修大):天守山地北部,山梨県身延町栃代における大規模マスムーブメント地形

20 福井幸太郎(立山カルデラ砂防博),金田平太郎(千葉大):飛騨山脈,立山カルデラ室堂山周辺の重力断層

21 苅谷愛彦(専修大),高岡貞夫(専修大),齋藤めぐみ(国立科博),小塚朋子(日さく):梓川右岸分水界上の「西穂池」における線状凹地埋積物の層序と年代

22 小森次郎(帝京平成大),佐久間理江(福島県視覚支援学校):山岳研究教育への3D プリンター利用の効果と課題

上高地現地討論会報告

アジア航測 安田正次

日本山の科学会2018年秋季大会の学術発表会・シンポジウムの翌日,2018年10月28日に上高地で開催された現地討論会に参加した.

当日9時に松本駅西口に集合し,信州大学のマイクロバスと山岳科学研究所の車で上高地へ移動した.移動しながら今回の案内役の横浜国立大学の若松伸彦氏から周辺の植生など(波田のケショウヤナギほか)について,日本ジオサービスの目代邦康氏から地形・地質や地史(道の駅「風穴の里」裏の風穴など)について説明があった.

釜トンネルを抜けた大正池取水口近くで一旦下車.奥穂高が白くなっていて素晴らしい景色を堪能する(写真1).ここでは焼岳東面の崩壊地や取水口に関係する浚渫事業について,また,割谷山南東面の崩壊地形について目代氏と専修大学の苅谷愛彦氏から説明があった.

写真1 大正池取水口付近

上高地バスターミナルに到着後は,上高地の地形と植生の関わりについて案内役の二人から説明を受ける.崩壊後の岩がごろごろしている場所では(写真2),ウラジロモミとシラビソ,オオシラビソが比較的多いとの説明を受ける.一般的には岩がちな場所ではコメツガなどが生育することが多いのだが,コメツガはあまり生えていないそうで,上高地は立地環境が特殊なことがよくわかる.

写真2 岩礫地上に成立している林分

明神岳を左に見ながら梓川左岸を上流へ移動しつつ,ハルニレやウラジロモミの林を抜けてさまざまな説明を受けた.その後,山岳科学研究所の上高地ステーションで昼食をとりながらマスの養殖場跡の説明なども受ける.

往きに時間を使いすぎたということで,帰りは梓川の右岸を早足に下山する.崖錐の説明や,大規模崩壊によって運ばれてきた巨岩群に成立する植生,河川流路の変化によって生じたと考えられる湿原などを観察しながら,バスターミナル着は15時.帰りのバスでは渋滞はほとんどなく16時頃には松本駅着,無事解散となった.

今回の現地検討会でもっとも印象的だったのは,扇状地を形成する小河川について(写真3),公園管理のために流路を固定し土砂を周辺へ積み上げ,結果として人工的に天井川を作っているという点だった.自然状態では,こういった小河川で時々おきる大規模な流下にともなって流路が変わることで森林を破壊し,崩壊地特有の植物種へ生息場所を提供しているという仕組みが成り立っている.こういった動的平衡状態によって上高地特有の植物種群が維持されているはずなのだが,その源である土砂の氾濫を人間がとめてしまうことによって,極相に向かって遷移が進み,特有の植物種が減少するという状況がみてとれた.

写真3 流路が固定された小河川

同様の事は主要河川である梓川でも行われており,こちらはヤナギの群落が危機にあるということだった.仕事柄,行政にも関わりがあり管理する立場も理解できるので心情的には辛いところではあるが,このままだと上高地の特殊性は失われ,ただの公園になってしまう.生態的な仕組みを深く理解せず,やみくもに現状を維持するという方針がとられている名勝地は全国に散見されるが,生態学的な知見が一般に広まってきている時代では,生態系に応じた方針の転換が必要であると痛感した.

上高地巡検に参加して

新潟大学理学部自然環境科学科4年
山岳環境研究室 杉山博崇

私の卒論研究のテーマは,日本を代表する登山ルートであり,観光地の側面を持つ白馬大雪渓周辺の地形変化である.今回の巡検がおこなわれる上高地も観光地として名高く,研究を進める上で糧になる知見が得られるだろうと期待して参加した.

天気は快晴だ.午前9時に松本駅前から上高地へと向かうバスに意気揚々と乗り込む.隣席の方に「新潟大学の4年生の杉山です」と挨拶したところ,「ああ,あの遅刻した杉山君だね」との返事が戻ってきた.恥ずかしながら私は新潟駅で乗る電車を間違えて,前日に開催された学会のポスター発表を大幅に遅刻していたのである.初めての学会発表は散々なデビューであったが,今日は上高地を楽しもうという自分がいた.車窓の景色を楽しんでいるとバスが山に入りはじめる.車窓は鮮やかな紅葉で明るくなり,寝ていた人も起きて写真を撮りはじめ満足気にほほ笑む.すばらしい紅葉の景色は,私の上高地への期待感を確実に高めていった.大正池に到着する.バスを降りると,「うっ」となる.暖かな車内とはうってかわり外はかなり寒く,この寒さは私の昨日の心の傷口にかなりしみた.大正池からみえる薄雪化粧した穂高連峰は雄大であり,山の厳しさが伝わってきた(写真1).

写真1 大正池からみた穂高連峰

河童橋から巡検がはじまった.本日の巡検のテーマは,「上高地の地形と植生――その価値と保全」で,案内者は日本ジオサービスの目代邦康氏と横浜国立大学の若松伸彦氏である.河童橋の右岸(側)には立派なケショウヤナギが生育していた.案内者の説明によると,ケショウヤナギは上高地や北海道の札内川などに限定して生育する貴重な種で,梓川の洪水時の河床の撹拌により生育場所が作られているという(写真2).しかし,国の事業は,上高地の建造物を保護するために堤防で河道を固定してしまい,この政策がケショウヤナギの生育場所を狭めてしまっているようだ.長い間維持されてきた上高地の地形と生態系のバランスが人の手によって変化しているのである.

写真2 梓川に生育するケショウヤナギ

梓川の左岸の登山道を上流へと歩いた.登山道は山からの土石流で形成された沖積錐を横断する.この沖積錐も上高地を代表する地形だ.いくつもの沖積錐を通る登山道は,自分の目の高さを変え,みえる景色も変えてくれる.ここでは同じような景色が続くという退屈な演出はなく,ただ歩くだけで十分に楽しめる.河床を流れる水流は網状に張り巡らされ,鮮やかな山の黄葉と河床の灰色のコントラストがすばらしい.巡検中,この美しい上高地の景色に見とれてしまい,私は当初の参加動機など忘れてしまっていた.気がつくと私は集団から離れ,左岸側の重要な説明を完全に聞き逃していた.

巡検では,山に関わる様々な分野の研究者が参加している.崩壊地形の巨礫が散在する場所があれば,地形学者がその地形の成因について,植物学者が礫の上に生える植物について,生物学者が巨礫の堆積によって作られる間隙に生息する動物について説明をするといった具合に,他分野の参加者の説明を同じ場所で聞くことができる.一つの場所を見るだけでも異分野の参加者たちが和気あいあいと議論を交わす時間は私にとっても有意義なものであるのだが,その議論に入ることができない未熟さも痛感した.

巡検が終わり,帰路につくバスの中でボーっと車窓を眺めながら今日の上高地の場面を思い返していた.初めて上高地に足を踏み入れた場面や,参加者たちの白熱した議論の場面を再生するのだが,どうも違和感しかない.どの場面にも多くの観光客,人工構造物,バスの列が入り込んでくるのだ(写真3).そう上高地は,美しい贅沢な自然と人工構造物という相反するものが一体化した場所だったのだ.巡検の最後に,「環境を保護する政策が,自然を破壊している」との説明があった.私が見た上高地はほんの一部だけだが,ここでは人工構造物のようなハードな政策の側面ばかりが目立つものだから,自然を守るというより観光地を守っているように私の目には映った.

写真3 上高地に停車するバスの行列

日本山の科学会2018年秋季研究大会(松本)の報告

『日本山の科学会2018年秋季研究大会(松本)』(信州山の環境研究センター・信州大学理学部 共催)が,2018年10月27日(土)に信州大学理学部において開催された。午前に行われた研究発表は43件で,51名の参加があった。今大会での研究発表はすべてポスター形式で行われ,発表の半数をそれぞれ1時間のコアタイムで実施した。大学院生や学部生の発表も多く,活発な議論が交わされた。また学生優秀発表賞2件,若手優秀発表賞1件を選出し,表彰した。これについては別記報告を参照されたい。

午後には,一般公開シンポジウム『日本アルプスの自然環境―わかってきたことと,これから』が,一般参加者40名を含む計91名の参加により開催された。日本アルプスの自然環境に関する雪氷,植物生態,昆虫生態,火山および環境保全の5件の講演が行われ,総合討論ではフロアからたくさんの質問が寄せられ,活発な討論が交わされた。

秋季研究大会に併せて,昼には日本山の科学会の総会が開催された。また,夕方にはホテル・モンターニュ松本において研究交流会が催され,会員の親睦,交流が深まった。
(報告 佐々木明彦)

研究発表大会の様子
研究発表大会後の記念写真撮影
一般公開シンポジウムの様子

日本山の科学会 第2回現地討論会【参加者募集のお知らせ】

◆内容:山梨県韮崎市青木鉱泉付近に、奈良ー平安時代に南アルプス地蔵ヶ岳で生じた巨大深層崩壊の痕跡をたずねます(巨礫集積地形、堰き止め湖成層、土石流地形等)。
◆地図:https://goo.gl/G14PuF (地理院地図)
◆日程:2018年11月25日(日)
◆集合:午前8時45分 JR中央線 韮崎駅前
◆解散:午後4時頃 同駅にて(予定)
◆費用:3000円(現地移動費・安全対策費等)
◆募集人員:12名(先着順)
◆主要文献:1)苅谷(2012):地形,33,297-313.2)Yamada et al(2017)Quaternary
Geochronology,44.3)木村ほか(2018)日本地すべり学会誌,55, 42-52.
◆申し込み方法:以下のフォームを埋めて世話人(専修大学 苅谷愛彦 kariya@isc.senshu-u.ac.jp
)までメールで送信。
受付後に確認メールを返信します。
いただいた個人情報は保険手続き・緊急連絡など、この企画に限定して使用します。
申し込み期限=11月15日(木)午後5時
◆その他:韮崎-現地間はミニバン車で移動します。持ち物等詳細は参加確定者に連絡します。

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(参加申し込みフォーム)

・氏名:
・フリガナ:
・性別:
・所属:
・生年月日(西暦):
・郵便番号と住所:
・当日連絡先(携帯電話番号):

送信先 kariya@isc.senshu-u.ac.jp
期限 11月15日(木)17時

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日本山の科学会事務局
e-mail: inf@jasms.sakura.ne.jp

国士舘大学文学部 地理学教室
〒154-8515 東京都世田谷区世田谷4-28-1
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日本山の科学会2018年春季研究大会の報告

JpGU 2018が開催されました(5月22日)

日本地球惑星科学連合2018年大会(JpGU 2018)において,「日本山の科学会」2018年春季研究大会を兼ねるセッション『山岳地域の自然環境変動(M-GI25)』が開催されました。
口頭とポスターをあわせて36件の発表がありました(うち招待講演8件)。会場には常時40~50名の聴衆があり,発表者との間で活発な議論が交わされました。
セッション終了後には,会場を移して,意見交換会を開催しました。